改訂・県都八策


政策を提言する。実現する。そして政策で結果を出す。

2023年4月公表


前文


 2019年に提案した『県都八策』。この4年間その実現を目指してきました。政治家は、耳障りのいいスローガンを掲げ、華やかにオーニングを飾ることが得意です。しかし大事なのは、事業を実現するというクロージングであり、その過程で政治は次第に脇役となっていくべきものです。

 昨年2月私は政策の自己評価を行いました。『県都八策』とは、8本の柱の元に21の政策目標を置き、52の具体的な取組を提案したものですが、評価の結果、20の取組が実現に向けて動き出し、6の取組に見通しがつきました。そして提案中のものが15、未だ構想段階にあるものが4、構想前の調査を要するものが7。

 決して高い達成率ではありませんが、来年度からは政策アドバイザーとの連携にも挑戦し、外部の検証による公約評価システムを確立したいと思っています。今回はこれからの静岡県と県都・静岡市に必要な政策目標を『改訂・県都八策』として、改めて提案します。


1 拠点を創る


1 地方創生の拠点を創る

 拠点とは活動の足場となる重要な地点のことです。街の拠点なら日常的に人と投資を引き寄せる中心街区だと私は考えています。ですから、一時的なイベントや周辺にイノベーションを起こさない施設整備は拠点とは言えないのです。

 私は県都・静岡市に4つの拠点が築かれることを期待しています。東静岡エリア、駿府城、清水港、そして大谷地区です。

 東静岡地区では、グランシップの駐車場となっている駅南口の県有地に令和9年の開館を目指し『中央図書館』の整備を進める予定で、来年度はいよいよ実施設計です。現在閉館中の駿河区谷田の中央図書館にひび割れが見つかってから、東静岡地区への移転整備の検討を提案し、基本構想、計画の立案へと毎年本会議で提案を重ね、県教委には従来の図書館の機能を遥かに超える拠点性の高い企画をまとめていただくことができました。読書や学びの空間であるだけでなく、高齢者には健康をサポートし、ビジネスに活用できるコンサルティング機能、大学や自治体の調査研究への対応、そしてホールやセミナールーム、カフェも揃えて現役の仕事世代、子育て世代の利用ニーズにも応えます。更に子どもたちへの幼児教育機能に加え、大学コンソーシアムの事務局の設置で県内大学の交流の拠点にもなります。こうして図書館へ多様な技術が導入されれば、必ず周辺にイノベーションを起こし、本県を象徴する拠点になり得ます。

 駿府城を中心とした市街地エリアの課題は、回遊性を高める移動空間の充実だと思っています。人が集まる街には至るところに細かい工夫が施されており、訪れる者の好奇心を刺激するものです。静岡駅、北街道、文化会館、浅間神社、そして呉服町から人宿町へと広がる商都。電線の地中化を実現し、回遊性を高めるために店舗のリノベーションを加速する支援制度も必要です。人が集まる商都にするには、歩きたい街になることです。私たち自身が楽しみながら、どんどん提案できる街づくりのチャレンジを応援できる大らかな街であって欲しいと思います。


2 まちづくりの拠点を創る

 初めての市議当選から 年。地元長田地区で3つの目標に取り組んできました。

 一つは安倍川駅のリニューアルと広場の整備でしたが、事業者、市行政、地元自治会と住民の皆さま、そして地権者の方々のおかげで実現していただくことができました。関係者との相談を始めてから19年という長い歳月を要しましたが、今や駅前通りの電線地中化やバリアフリーも整っています。 

 二つ目は長田地区の行政機能の強化です。2007年の政令市実現当時、長田地区活性化協議会や自治会の皆さまとオーク長田への区役所支所の設置に取り組みました。当時から区役所へのアクセスが不便なこともあり、いずれ支所を独立させたいとの声がありました。未だ構想段階ですが、安倍川駅前の市有地を活用して、各種手続きだけでなく、福祉、防災の拠点としても、6万5千人の人口を支える行政機能が必要だと感じています。

 三つ目はコミュニティバスの実現です。これは長田地区に限らず、市内には他にも実現を求める地域があるようです。仕事から地域へと活動を移した最大人口の団塊の世代。免許返納の希望を叶えて交通事故を減少させるためにも、地域内での手軽な移動手段が求められています。地域包括ケアシステムの効果を発揮するためにも、医療や福祉へのアクセスがもっと容易になる必要があります。人口構造や働き方の変化、地域内でのニーズの変化を捉え、これからの時代に最適な交通網について、前向きな議論を進めたいと思います。

 

 静岡海岸でもまちづくりの動きが進んでいます。中島から久能へと防潮堤整備が進み、駿河湾の景観を楽しめるようになりました。これから大浜プールのリニューアル、マッケンジー邸周辺空き地の民間活用、そして今や更地になった駒越地区にある県果樹研究センター跡地の利用方法の検討、更に清水区の折戸湾から三保地区内浜にかけては、海産物の養殖が始まったり、海洋スポーツの拠点化、ホテルやレストランを集積するリゾート開発の構想などが提案されています。これまでも用宗漁港周辺での観光・宿泊・飲食施設へのリノベーションや大谷地区の土地区画整理事業、『どうする家康』の効果もあって連日賑わいを見せる石垣いちごと東照宮の久能など、静岡海岸には人々を引き寄せる魅力づくりが点在しています。

 

 点から線へ、そして面へ。点で始まった挑戦を繋ぐために、快適で楽しめる移動の工夫、恒常的に人が集まるようになれば、面が出来上がっていきます。やがてこれが街のブランドになります。政治にできることは、挑戦するプレーヤーを繋ぐこと、移動空間の安全性と自由な開発を応援する仕組みづくりです。


2 持続可能な社会を築く


3 SDGsの目標を共有する

 令和8年度の開校を目指して、駿河区曲金の県視覚特別支援学校の敷地内に、新たに定員117名の知的特別支援高等部の整備が始まります。令和5年度には設計と解体、翌年度には建設工事が始まり、この間現在の視覚支援利用生徒が一時的に南部特別支援学校を仮校舎とします。葵区の北特別支援学校が手狭になったための高等部移転ですが、ご父兄からの要望を受けて私もこの整備を推進してきました。こうした背景もあり、東静岡駅から済生会病院、視覚支援学校の全通学路の点字ブロックの総点検作業を行いました。当事者、保護者、教諭、警察、県教委、市の道路や障害担当の職員などのご協力をいただいて、破損、摩耗、交差点の音響不備、バス停への誘導などの課題を確認。対応策を見つけ、他の地区でも活かされる仕組みづくりに繋げます。

 SDGsは、国際社会共通の開発目標。17の目標のうち、暮らしに身近な事柄から、地域にもある課題を知り、共有することから始めなくてはなりません。


4 安全で利便性の高い、高度な生活を実現する

 市町村合併が国中で進められた頃よりも、自民党が政権を降りた時よりも、今の方がよほど時代の変化の激しさを感じます。それは技術革新による街区の高度化です。クリーンエネルギーを自ら生み出して循環させ、街区内の店舗、イベント、防犯などの情報はネットワークで瞬時に共有され、シェルターや備蓄で災害に備える。日常的に必要となる身近な医療、福祉であらゆる世代の街区生活を実現し、カーシェアリングや電動の小型バスで落ち着いた生活空間へ。

 裾野市で計画されるウーブンシティや藤沢市のサスティナブルシティでは、AIやロボット技術を導入してこうしたスマートタウンを実現し、導入されていく技術の研究、融合、生産、輸送が街区近隣で進めば、街区による産業創出が生まれます。私はこれが持続可能なコミュニティ産業の未来の姿だと思っています。

 大谷地区で進められる区画整理事業。これは雇用を生み出し技術の集積を呼び込む大きなチャンスです。行政当局へ未来志向での街区形成に繋がるよう、企業立地や技術導入への支援制度の更なる拡充を提案します。


3 家族を守る


5 家庭の豊かさを大切にする

 エネルギーや物価の高騰による生産と消費の停滞を招かないよう、国の支援制度を見定め、必要に応じて本県単独の施策展開を提言する議会でありたいと思います。また、教育費の公的負担の拡充、高齢者の交通費支援、在宅ビジネスへの設備投資支援などを進め家計負担の軽減を図ります。また、家族の時間、空間を大切にできる街や施設を整備します。


6 コミュニティの力を引き出す

 

 公民館や公園の整備要望を踏まえ、行政による支援制度の更なる充実を図ります。特に公園専用駐車場を提案し、公園内集会所の整備や利用についても柔軟性を求めていきます。また自治会活動や地域の伝統行事を継承するため(仮称)自治会活動応援条例の制定を提案します。また地域の防災力、防犯力、そして教育力などの向上に資する活動や組織存続への経済的支援の充実を求めていきます。


4 富を増やす


7 経済圏を拡大する

 リニア開通は本県経済にとって有益なのか。或いは有益に導く本県の取り組みは可能なのか。その議論も始めなくてはなりません。リニアは、一都三県の首都圏4千4百万人の通勤経済圏を、大阪、名古屋を合わせた6千万人規模へと拡大します。東京-大阪間もいずれ1時間での移動圏内となります。

 神奈川、山梨、長野、岐阜のリニア駅が設置される都市は、生産の効率化と災害からの安全性を求めるサプライチェーンを集積するビジョンを打ち出すようになりました。情報、AI、防災、自動化、などの先端技術を組み合わせ、散在していた生産拠点を集約する内陸部への産業移動は、人とモノの移動を省略させ、飛躍的に労働生産性を引き上げて、人口減少に伴う労働力不足を補っていくかも知れません。

 この時代に静岡県は、6千万人経済圏の一員となっているでしょうか。この事は政治が目を逸らすことのできない本県の課題です。

 第一に静岡駅への新幹線停車本数を増加させること、第二に静岡空港が羽田や成田を補完する空港として認知され、山梨、長野からも利用者を獲得すること、そして第三に清水港の更なる振興と内陸県との輸送網を確立していくことだと、私は思っています。県内企業の活動と成長を後押しするためにも、こうした視野に立った戦略が必要だと思っています。 


8 成長産業を集積する

本県独自のものづくり交付金や創業支援、新規事業挑戦への支援など、成長が期待される産業への参入企業を応援する制度を充実します。

 葵区北部では医療サービス用機器の生産、研究、駿河区大谷では物流、食品産業、清水港周辺には貨物や輸送の自動化、また製品加工産業などの誘致など、企業の挑戦を応援します。観光産業では、夜間イベントの充実による宿泊客の増加や中心市街地には歴史や花などを活用した、移動や散策を楽しめるまちづくりを提案します。


9 企業の挑戦を応援する

 

 私が県議会の産業委員長を務めていた年にコロナが発生しました。コロナ禍でも業務を継続できるよう補助金の実施を求めことから、企業が業態を変えたり、新たな事業展開に挑戦したり、情報端末による業務の効率化などに利用できる『中小企業等危機克服チャレンジ支援事業費補助金』が実現しました。これはコロナ後も企業の挑戦を応援するために継続したい支援制度です。

 その他、販路の拡大、コスト削減への支援、地元中小企業の受注機会の一層の拡大、新技術の行政による先行導入の拡大、士業の専門性の活用など、これからも継続して提言を重ねていきます。


10 一次産業の安定を図る

 気候変動、災害による影響を最も受けるのが一次産業です。そして被害から立ち直るための支援や仕組みづくりが遅れているのもこの分野だと、昨年の台風で痛感しました。保険だけでは賄いきれない復旧費用、復旧作業が終わるまでは新しい事業展開にも挑戦できません。早急に制度を充実させ、一次産業の災害への対応力を高めていく必要があります。

 また、担い手の確保、生産品のブランド化、先端技術を搭載した生産機器の導入を支援し、技術の普及を加速するなど、継続して支援策の充実を提案していきます。 


5 命を守る


11 津波から生命と財産を守る

  中島地区から開始した防潮堤整備も久能地区まで進みました。ご協力くださった地元の皆様には、深く感謝申し上げます。引き続き一日でも早く完成するよう、予算の確保に努めていきます。

 しかし、延長7・9㎞、高さ8・5mのこの防潮堤は、南海トラフ地震などで発生する最大津波には対応できないとされており、大地震発生時には沿岸部の皆様にこれまで同様避難をしていただくことになります。

 津波避難所には、家族の安否が分からず集まってくる方々ばかりかも知れません。不安や苛立ちを誰もが抱えての避難です。県のアクションプログラムに示された対策による被害者9割減は、全ての沿岸部住民が避難行動を取ることを前提としています。今後も啓発に取り組みます。 


12 河川を治め豪雨から街を守る

  県議当選以来 年間、丸子川の土砂の堆積と草木の繁茂、護岸の強度などの視察調査を2年に1度、実施してきました。地元自治会の役員の皆さん、土木事務所や市河川課の皆さんのご協力のおかげです。今後もこの定期点検を続け、適切な維持管理に努めます。一方昨年の台風で住宅への浸水が再び発生したことから、下川原BP地下の雨水貯留施設の適切な運用について早急な方針策定が必要です。

 浜川も高潮発生時の河口部排水の停滞を解消するため、専門家も交えて原因究明の調査を続けていますが、上流部の排水区域の見直しや流域貯水の大規模施設の整備なども検討が必要です。また浜川に雨水を送り出す中田雨水幹線などの確実な排水を実現するため、これまでもポンプの増設、排水場所の分散化などを進めてきましたが、今後はその効果を見定め、一層の安全確保に努めます。

 大谷川も山間部からの流入河川の維持管理のため、定期的な点検作業を行います。また河口部の堆積土砂の掘削、崩落テトラの回復作業など、事業予算の安定的確保に努めます。更に、大谷川放水路建設に伴う条件であった麻機遊水地の整備を求めていきます


13 土砂崩落を防ぐ

山間部における危険な盛土が相次いで見つかっています。県の点検で明らかとなった盛土への適切な対応を求めていきます。

 熱海市土石流災害については、県の関与が適正だったかと巡る外部の検証作業について、県議会の特別委員会は再度検証すべきとの提言書をまとめました。引き続き被災者の方々への支援に努め、今後は、この災害を教訓に、被災地での相談体制の充実、支援職員の訓練の充実を求めたいと思います。

 更に台風15号の被災状況から、今後は山間部の荒廃状況を定期的に監視する仕組みを立ち上げ、堰堤やダムの適切な管理方法を確立するよう提言します。

 


14 感染症を克服する社会を築き上げる

 政府は今年5月8日からコロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けを5類と定め実施を決めました。感染者数の実数公表や行動制限はなくなりますが、発熱外来の実施やコロナ医療費の公費負担などは今後の感染状況によっては継続を求めます。

 コロナ感染症の経験を制度へ。人材確保と訓練、備品や設備の備蓄、行動制限回復後の経済政策など、県行政と検証を進めます。


6 高度で温かい教育を実現する


15 教育力を高める

 国際教育、理系教育など新たな挑戦を始めた教育機関を応援します。外部との交流機会を拡大し、教員の人間性と経験を高めます。部活動の指導者として、より高度な技術者の派遣を推進し、希望する選手の育成に努めます。

 また教員の不祥事を根絶するため、厳格な対応を求めます。

 

 


16 大学をまちづくりの中心におく

  大学が行う研究事業を支える基金の創設を提案し、地元大学の専門性を広く共有して、自治体、産業界との連携を深めます。

 大学コンソーシアムを更に充実させ、大学間の相互連携、共同研究、学生の学習機会の拡大を進めます。東静岡地区、草薙地区、日本平山麓のエリアの回遊性を高め、学生街の形成を図ります。特に新県立図書館を中心に大学生の姿の見える、活動が伝わり街が若返るまちづくりに挑戦します。

 


17 学校の問題解決力を向上する

 弁護士、カウンセラー、医師、看護師、警察など専門職を活用し、生徒・児童の悩みに専門的なアプローチを実現して解決力を向上させると同時に、担任教諭への過重な負担を軽減します。

 いじめ・不登校問題など、他県よりも発生件数が高く、解決率が低い問題について、教育現場に明確な目標意識を備えるよう提言します。学校の防災、防犯、事故への対応力を高めるため、定期的な訓練を確実に実施し、その質を高めるよう専門家による評価を実現します。


7 国・県・市が連携する


18 広域行政の時代に備える

 リニア開通による社会変革や道州制の実現を視野に、近隣県との政治的連携、経済や市場の一帯性を構築するよう、提言します。

 富士山静岡空港、清水港の魅力を発信し、県外からの利用者や貨物の県外取扱量の増大を目指します。

 


19 不断の行政改革を実行する

  県市職員の政策協議の場を実現します。また県庁内職員の確実な業務引継、会議記録など公文書の保存や共有を徹底し、事故や災害への組織的な対応が常になされるよう、議会の監視力を高めます。


8 政策力を高める


20 議員の政策力を高める

  議員自らが提案した政策について、その達成状況を評価して公表します。評価や公表にあたっては、自己評価にとどまらず、議員活動や政策立案、遂行へのアドバイザーの関与を実現し、公約評価の仕組みを確立します。

 議員の条例制定への取り組みを充実するために、政務活動費の活用、議会事務局など政策スタッフの充実を求めていきます。

 議員自らが提案した政策について、その達成状況を評価して公表します。評価や公表にあたっては、自己評価にとどまらず、議員活動や政策立案、遂行へのアドバイザーの関与を実現し、公約評価の仕組みを確立します。

 議員の条例制定への取り組みを充実するために、政務活動費の活用、議会事務局など政策スタッフの充実を求めていきます。

 


21 職員の企画力を高める

  やらない理由を口にしない、実現第一主義の職員の育成に努めます。また細分化された行政機能によるたらい回しの弊害を防ぐため、直接サービスにあたる職員の適正数を確保したり、外部への委託を進めます。

  地域のお祭りや消防団、青年会議所活動などへ、希望する若手職員の参加機会を設け、外部との交流機会を創出して、人間力を磨くよう働きかけます。